准教授:神崎 亮

住所:890-0065 鹿児島市郡元1-21-35 鹿児島大学理学部
研究室のある位置:理学部1号館3階339号室
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研究・教育の紹介

地球環境と化学

ひとことで地球環境といっても幅広く、おおよそ全ての自然科学が「地球環境科学」という言葉に含められるでしょう.その中において化学の占める役割は、「物質」および「エネルギー」です.

例えば、地球規模における物質循環は、地球上の至るところで起きている電離や錯生成、酸化還元、溶解や再結晶、分散や凝集、蒸留や析出といった、1つ1つは十分に単純化された化学反応や化学操作の量的・時間的な組み合わせの結果によるものです.

一方で、地球規模における問題の多くが、エネルギーの問題に帰着することができます. 地球上の生命体が使えるほぼ唯一のエネルギー源である太陽光線からエネルギーを取り出すには、炭素を中心とした一連の化合物による化学エネルギーや、金属の酸化還元反応による電気エネルギーの相互変換と蓄積が、重要な役割を演じています.

イオン液体とは?

最も身近な電解質である食塩(塩化ナトリウム)は、約800℃で融解し液体となります.この液体は、陽イオン(ナトリウムイオン)と陰イオン(塩化物イオン)のみからなっています.ある種の電解質で、一般に、融点が100℃以下の電解質をイオン液体と呼びます.

イオン液体は、電荷を持った粒子(イオン)が凝縮した液体ですから、水や有機溶媒とは状況が大きく異なります.そのため「第三の溶媒」として注目を集める一方で、基礎研究は進んでおらず、水や有機溶媒ほどはその性質が分かっていません.

地球環境とイオン液体

イオン液体は新しい溶媒として多彩な可能性を秘めていますが、地球環境との関係で言うと大きく3つ挙げられます.まず(1)環境低負荷な溶媒として従来の有機溶媒への置き換えです.イオン液体は蒸散しにくい性質があるため、環境拡散性が低いだけでなく、燃えにくい溶媒として、「グリーンケミストリー」の一角を占めています.炭酸ガス排出量の一時的な削減手段として、二酸化炭素吸蔵液体としての研究もあります.次に燃料電池や二次電池など(2)電気化学デバイスへの応用です.再生可能エネルギーを有効利用するためにはこれらのデバイスの飛躍的な性能向上が必須であり、そのブレイクスルーとして期待されています.一方、より基礎研究に近い分野では、地下で高温高圧となり実験室では再現できないぐらい濃厚になった電解質水溶液や、さらに深部で溶融している岩石など(3)特殊環境のモデル液体としても興味を持たれています.

実はイオン液体そのものは100年以上前に発見されていましたが、近年急速に研究が発展しています.これを牽引したのは、環境への配慮という観点です.前世紀の化学は、後半世紀において人々の暮らしを豊かにする一方で、様々な環境問題を引き起こしてきました.現代の化学は、これに対する強烈な反省のもと、環境に配慮しながら人類の福祉に貢献することを目標に展開されています.

スライドこの1枚

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イオン液体を使ったリチウムイオン2次電池(充電可能な電池)

研究室への配属希望者へ

学問分野で言うと、「分析化学」です.卒業・修論研究では、イオン液体をテーマとして、これを溶媒としたとき、電離反応や錯生成反応、コロイド粒子の分散が、水溶液とどのように異なっているのかを解明していきます.基本的に環境分析化学実験の延長ですが、精度を高めるための様々な工夫をしています.分析化学の基本的な知識に加え、イオン液体の合成など化学における一通りの技術が身に付きます.

授業では、その前提となる理論として、無機化学や物理化学の分野を広く取り上げました.その分、理解が浅い部分もあるかもしれませんが、不足している部分は卒論や修論指導やセミナーの場で補足していきます.

なお、セミナーほか研究室行事は、冨安先生・児玉谷先生と協力して進めていきます.